2023年10月20日

22023年 第41週
(令和5年10月9日~令和5年10月15日)

【今週の注目疾患】
■つつが虫病・日本紅斑熱
 2023 年第 41 週に県内医療機関からつつが虫病の届出が 1 例あり、2023 年の累計届出数は 13例となった。
性別では男性 10 例(77%)、女性 3 例(23%)で男性が多い。
年齢群別では 60 代が5 例(38%)で最も多く、次いで 70 代が 4 例(31%)、80 代が 3 例(23%)であり、60 代以上が2023 年の届出全体の 9 割以上を占めていた。
 つつが虫病及び同じくダニ媒介感染症である日本紅斑熱の届出数は近年増加傾向にある。
 例年、日本紅斑熱は 11 月頃まで届出があり、つつが虫病は 11 月頃から届出数が増加する傾向にある。

 つつが虫病と日本紅斑熱は臨床症状が似ており、「(1)発熱、(2)皮疹、(3)刺し口」のいわゆる 3徴が共通している。
しかし、患者が必ずしも受診時に発熱を認めるとは限らず、また、患者が皮疹や刺し口の存在を自覚したり、自ら医師に伝える頻度は低いため、注意を要すると報告されている 1)。
つつが虫病と日本紅斑熱はともに有効な抗菌薬(第一選択薬はテトラサイクリン系)があるが、死亡例が報告されているため、適切な診断・治療が重要である 2)。

 つつが虫病の病原体は Orientia tsutsugamushi と呼ばれるリケッチアで、ダニ類の一種であるツツガムシが媒介する。
わが国で本菌を媒介するツツガムシは 3 種類が主であり、それぞれのツツガムシの 0.1~3%が菌をもつ有毒ツツガムシである。
ヒトはこの有毒ツツガムシに吸着されると菌に感染する。
つつが虫病の潜伏期間は 5〜14 日で、典型的な症例では高熱を伴って発症し、皮膚には特徴的なツツガムシの刺し口(黒色痂疲)がみられ、その後数日で体幹部を中心に発疹がみられるようになる。
また、患者の多くは倦怠感、頭痛を訴え、患者の半数には刺し口近傍の所属リンパ節、あるいは全身のリンパ節の腫脹がみられる2)。
 日本紅斑熱は紅斑熱群リケッチアの一種 Rickettsia japonica を起因病原体とし、病原体を持つマダニに刺咬されることにより感染する。
全てのマダニがリケッチアをもつわけではなく、リケッチアを持つマダニに刺咬された時だけ感染する。
潜伏期間は 2~8 日で、つつが虫病と比べてやや短い。
つつが虫病との臨床的な鑑別は困難であるが、発疹は体幹部より四肢末端部に比較的強く出現すること、つつが虫病に比べ刺し口の中心痂皮部分が小さいなどの特徴があり、刺し口が確認される頻度はやや低い 2)。

 つつが虫病や日本紅斑熱を予防するワクチンはないため、ダニの刺咬を防ぐことが極めて重要となる。
農作業や山林作業、レジャーなどで山林や草むらなどに立ち入る場合には、(1)半ズボンやサンダル履きなどの軽装は避け、長袖長ズボンなど肌の露出が少ない服装にする、(2)忌避剤(防虫スプレー)を使用する、(3)地面に直接座らずに敷物を使用する、(4)帰宅をしたらすぐに着替え、洗濯する、(5)帰宅後はすぐに入浴し、体にダニが付いていないか確認する、などの対策をとる。
また、刺咬された場合には、無理に引き抜くとダニの一部が皮膚に残ってしまうことがあるので、医療機関を受診して除去してもらうことが推奨される 2-5)。

■参考・引用
1)IASR つつが虫病の臨床的特徴と、類似疾患との比較
>>詳細はこちら
2)IDWR 注目すべき感染症 ダニ媒介感染症 つつが虫病・日本紅斑熱
>>詳細はこちら
3)千葉県衛生研究所:つつが虫病に注意!
>>詳細はこちら
4)千葉県衛生研究所:マダニ被害に遭わないために!
>>詳細はこちら
5)千葉県健康福祉部疾病対策課:ダニ媒介感染症について
>>詳細はこちら

【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
 2023 年第 41 週の県全体の定点当たり報告数は、前週の 6.17 人*から減少し、3.75 人であった。
 地域別では、長生(5.86)、海匝(5.50)、君津(5.15)保健所管内で患者報告数が多かった。

 *前週報告時点では6.24人

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年10月18日更新)