2022年09月09日

2022年 第 35 週(2022/8/29~2022/9/4)

【今週の注目疾患】
■梅毒
 2022 年第 35 週の県内医療機関から報告された梅毒は 2 例であった。
累積報告数は 208 例となり、昨年同週時点と比べて約 1.5 倍となっている(2021 年第 35 週累積報告数 141 例)。
昨年より2 ヵ月以上早く累積報告数が 200 を超えており(2021 年第 47 週 200 例)、9 月時点で既に 1999年の現行感染症サーベイランス開始以降、最多を記録した昨年の累積報告数 235 例に迫る報告数となっている。

 性別では男性 144 例(69%)、女性 64 例(31%)であり、男性が多かった。
昨年同週時点では男性 89 例(63%)、女性 52 例(37%)であり、昨年よりも男性の占める割合が多くなっている。
 年代別では、男性は 40 代 51 例(35%)、30 代 32 例(22%)が多く、次いで 50 代 29 例(20%)であった。
昨年同週時点と比較して 20 代の報告数は大きく変わらない一方で、30~50 代では増加しており、特に 40 代と 50 代が 2 倍以上増加していた。
女性では 20 代が 40 例(63%)で最も多く報告されており、昨年同週時点と比較して報告数は 1.6 倍に増加した。
20 代の占める割合も昨年同週時点では 48%であり、48%から 63%へ増加した。

 病型別では、男性は早期顕症梅毒第Ⅰ期(以下、第Ⅰ期)が 96 例(67%)と最も多かった。
昨年同週時点では 37 例(42%)であり、第Ⅰ期の割合が増加した。
女性では早期顕症梅毒第Ⅱ期(以下、第Ⅱ期)が 30 例(47%)と最も多かった。
昨年同週時点では第Ⅱ期が 21 例(40%)であり、第Ⅱ期の割合は増加した。
一方、第Ⅰ期の割合も 7 例(13%)から 14 例(22%)に増加した。
2022年は現時点で、先天梅毒の症例は報告されていないが 2 例の妊娠症例が報告されている。

 梅毒は、梅毒トレポネーマを原因とする細菌感染症である。
主な感染経路は菌を排出している感染者との性器や肛門、口腔などの粘膜の接触を伴う性行為や疑似性行為によるものである。
予防としては、感染者との性行為や疑似性行為を避けることが基本となる。
コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染がおこる可能性があるため、コンドームの使用は完全ではないものの予防効果があることが示唆されている 1,2)。
早期発見・早期治療が重要である。
再感染を予防するため、パートナーもともに検査を受けることが推奨される。
県では保健所において無料・匿名の検査を実施しているとともに、(公財)ちば県民保健予防財団への委託による検査を実施している。
受検を希望する方は活用されたい。
なお、新型コロナウイルス感染症の流行状況に伴い変更される場合もあるので、最新の検査実施状況については、県ホームページ等でご確認いただきたい 3)。
 梅毒は、感染後 3~6 週間の潜伏期間を経て、継時的に様々な臨床症状が逐次出現する。
【第Ⅰ期】
 感染約 3 週間後に梅毒トレポネーマの感染部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)に、しこりが形成されることがある。
無治療でも数週間で軽快する。感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒の検査が勧められる。
【第Ⅱ期】
 第Ⅰ期の症状消失後、4~10 週間の潜伏期間を経て、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹がでることがあるほか、脱毛、発熱・倦怠感の全身症状等多彩な症状を呈する。
無治療でも数週間で軽快するが、この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器に障害がおこることがある。
【潜伏梅毒】(無症状病原体保有者)
 梅毒血清反応陽性で顕性症状が認められないものをさし、第Ⅰ期と第Ⅱ期の間、第Ⅱ期の症状消失後の状態を主にいう。
第Ⅱ期の症状が消失後、再度第Ⅱ期の症状を示すことがあり、これは感染成立後 1 年以内に起こることから、早期潜伏梅毒と呼ぶ。
これに対して、感染成立後 1 年以上たつ血清梅毒反応陽性で無症状の状態を後期潜伏梅毒と呼ぶ。
【晩期顕症梅毒】
 無治療で経過した者のうち、約 3 分の 1 で起こる。
ゴム腫、進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒、進行麻痺に代表される神経梅毒に進展する。
場合によっては死に至る。
【先天梅毒】
 梅毒に罹患している母体から胎盤を通じて胎児に伝播される多臓器感染症であり、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがある1,2)。

■手足口病
 警報発令継続中(警報開始基準値 5.0 終息基準値 2.0)
 2022 年第 35 週手足口病定点当たり報告数 県全体 3.75 (人) 前週 3.81(人)から減少
 第 27 週に警報開始基準値である定点当たり報告数 5.0(人)を上回って以降、県内では警報発令状況が続いており、感染予防として手洗いの励行等が重要である。

■参考
1)国立感染症研究所:梅毒とは
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:梅毒に関する Q&A
>>詳細はこちら
3)千葉県:梅毒が増えています
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年9月7日更新)