2023年05月05日

2023年 第17週
(令和5年4月24日~令和5年4月30日)

【今週の注目疾患】
■腸管出血性大腸菌感染症
 2023 年第 17 週に県内医療機関から 4 例の腸管出血性大腸菌感染症の届出があり、本年の累計は 18 例となった。
第 17 週時点では過去 5 年間で 2 番目に多い累計数となった。

 性別では、男性10例(55.6%)、女性8例(44.4%)であった。年代別では、50代が6例(33.3%)と最も多く、次いで10代4例(22.2%)及び30代4例(22.2%)と続いた。
例年、小児から高齢者まで幅広い年齢層の報告がある。
本年はこれまでのところ、溶血性尿毒症症候群(HUS)の報告はない。

 腸管出血性大腸菌感染症の原因菌はベロ毒素(VT)を産生する大腸菌である。
人を発症させる菌数はわずか50個程度と考えられている。
少ない菌数で感染が成立するため、人から人への経路や、人から食材・食品への経路で感染が拡大しやすい。
 腸管出血性大腸菌は、家畜などの腸管内に生息しており、感染経路は糞便に汚染された食品や手指などを介した経口感染である。

 症状は無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々である。
多くの場合、3~5日間の潜伏期を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様便の後に血便となる。
発熱は軽度で37℃台である。血便の初期には血液の混入は少量であるが、次第に増加し、典型例では便成分の少ない血液そのものという状態になる。
有症者の6~7%において、下痢などの初発症状発現の数日から2週間以内に溶血性尿毒症症候群(HUS)または脳症などの重篤な合併症が発生する。HUSを発症した患者の致死率は1~5%とされている1)。

 予防の方法として、食品を介した経口感染(食べ物から人への感染)に対しては、食肉類は中心部までよく加熱すること(中心部が75℃1分間以上の加熱)、生肉を触った後の手指、調理器具はよく洗浄して消毒する、まな板等の調理器具は用途別に使い分ける、生肉を取り分ける箸(トング)と焼きあがった肉を取り分けたり食べたりする箸(トング)を使い分ける、加熱しないで食べる野菜や果物は、十分に洗浄の上、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌することが重要である2)。
 手指を介した経口感染(人から人への感染)に対しては、手洗いが最も重要である。
排便後や食事前はもちろんのこと、特に下痢をしている乳幼児や高齢者の世話をする際には、使い捨て手袋を用い、作業後には石けんと流水でよく手を洗う。
腸管出血性大腸菌は、少量の菌数で感染が成立するので、乳幼児や高齢者が集団生活を行う場合や家庭内などでは二次感染の防止が重要である3)。

■参考
1)国立感染症研究所:腸管出血性大腸菌感染症とは
>>詳細はこちら
2)千葉県:腸管出血性大腸菌について
>>詳細はこちら
3)厚生労働省:一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)
>>詳細はこちら

■その他Topics
【海外から帰国された皆様へ】
 海外においては、国内では見られない感染症が流行していることがあり、海外滞在中に感染する可能性があります。
感染症には、潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が数日から1週間以上と長いものもあり、渡航中又は帰国直後に症状がなくても、しばらくしてから具合が悪くなる場合があります。
その場合は、医療機関を受診し、渡航先、滞在期間、現地での飲食状況、渡航先での活動内容、動物との接触の有無、ワクチン接種歴などについてお伝えください1)。
なお、医療機関を受診する際には事前に電話連絡して、海外渡航歴があることをお伝えください。
その他不安があれば、最寄りの保健所にお問い合わせください。

1)厚生労働省検疫所FORTH:海外へ渡航される皆さまへ!
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年5月8日更新)